一般的に、挨拶状では、幸せな出来事に関連して選ばれた日付を使って、相手に知らせるための言葉が使われます。
吉日という言葉は、縁起の良い意味を持つため、例えば葬儀などの不幸な出来事には使用されません。同様に、ビジネス文書のように正確な日付が重要な場合、挨拶状でのこの表現は一般的には使われません。
お祝い事の案内などにおいて、日付を強調するための言葉として覚えておくと役立ちます。
この記事では、手紙やビジネス文書の日付に「○月吉日」が使われる意味や理由について解説します。
吉日の意味
「吉日」は(きちじつ)(きつじつ)(きちにち)などと読みます。
「祝い事などをするのに良い日がら」「縁起が良い日」「めでたい日」であることを意味します。
それ故、その縁起をかついで結婚式、開店、引っ越しなど、新しい門出の日は「吉日」の日から選ばれることが多いのです。
「○月吉日」の意味と使い方
「○月吉日」とは、「○月における佳き日」という意味を表しています。
本来手紙などは「○月○日」と日付を入れるものなのですが、慶事の案内状などは特定した日付で出すことはまれです。
やはり祝い事であれば、縁起をかついで「○月○日」でなく「○月吉日」としたいのです。
「祝い物を届ける日」は「吉日」にするとか、「婚礼は吉日を選んであげる」とか祝い事に関してよく使われます。
また、手紙や案内状でも「○月吉日」のように日付とし吉日を使うことがあります。
お祝い事の案内に際し、「◯月のこの佳き日を選んで書きました。」という気持をこめて、「吉日」という縁起のよい用語を使っているのです。
- 婚礼 (結婚式、披露宴の招待状)
- 建築 (地鎮祭、建前、上棟式のお知らせ)
- 記念日(創立記念日や祝賀パーティーなど、祝い事の案内状)
- 還暦など、おめでたい日を祝う案内状
これらは、日付を「◯月吉日」にするのがなかば常識のようです。
実際のビジネスシーンでの吉日の活用事例
ビジネスの世界では、吉日は重要な決定や契約、プロジェクトの開始日といった重要なイベントの日程を決める際に考慮されることが多いです。特に、日本国内の企業や日本とビジネスを行う国際企業間で見られるこの慣習は、商談の成功率を高めると信じられています。
事例1:契約書の締結
ある日本の大手企業では、新しい事業パートナーとの契約書の締結日を決める際に、特に「大安」などの吉日を選ぶようにしています。これは、取引のスタートを良い日にすることで、今後の事業運営がスムーズに進むという期待からです。その結果、相手方もこの配慮を高く評価し、信頼関係の構築に寄与している例が報告されています。
事例2:プロジェクトの開始
別のテクノロジー企業では、新しい開発プロジェクトの公式なスタート日を「吉日」に合わせています。プロジェクトチームはこの日に全員が集まり、開始式典を行うことで、プロジェクトの成功を祈願します。この慣習はチームの士気を高め、プロジェクトの初動をスムーズにする効果があるとされています。
事例3:重要なプレゼンテーションのスケジューリング
あるマーケティング会社では、クライアントへの重要な提案やプレゼンテーションの日に吉日を選ぶことがあります。吉日にプレゼンテーションを行うことで、プロジェクトへの良いスタートとなり、クライアントからの反応も良好であると感じられることが多いです。
「○月吉日」を使わない文書
「〇〇月吉日」は、お祝い事全般に使われ、『吉日』に縁起を担ぐ意味合いもあるため、特に日付にこだわらない文章に使われます。
そのため、次のような文書の日付に使うのは不適切であり、「吉日」を使用することはありません。
お礼状
どのような内容であれ、相手への感謝の気持ちを伝える手紙で、かいた日を曖昧にするというのは、良くないです。
「○月吉日」の日付にする意味も理解できません。
かいた日付は明記して、相手に届く日と大きなタイムラグがでないように、その日のうちに投函するのがベストです。
遺言書
遺言書は、生前中にいつでも書き換えることができるため、最新の日付のものが有効とされます。
したがって、たとえば「〇月吉日」などと不明瞭な表現をしてはいけません。遺言書の妥当性を確認するのが難しくなるので正確な日付の記載が必要です。
弔事の案内
吉日は縁起が良い日を指すため、葬儀や法事などの弔事でこの表現を使用するのは適切ではありません。
ビジネスに関する文書
議事録や報告書、契約書、発注書、請求書、領収書などなど、いつのものなのかを明確にしておく必要がある書類には正確な日付の記載が必要です。
ただ、ビジネスの場でも、創立〇〇年記念、社屋竣工式、出版記念式典などなど関係先への案内状の日付は、ほとんどが「〇年〇月吉日」となっています。
自社の祝い事に関する案内状、挨拶の文書には日付に「○月吉日」を使ってもよいということです。
いつ案内をだしたかなどは、たいした問題ではなく、それよりも、「佳き日を選んでご案内します」という縁起かつぎに重点が置かれているのです。
通常のビジネス文書は、いつだしたかを明確にしておく必要がありますが、日付が重要な意味を持たないものなどには「吉日」が使われることはあります。
ただし、慶事以外の一般書類、また、公文書に使用されることはありません。
ビジネス文書でも日付をぼかす意味で使う
ビジネス文書のたぐいでも、「吉日」とすることがあります。
この場合は「縁起をかつぐ」というより、書いた日付をぼかしたいとか、そのほうが便利がよいという場合です。
- 各種ダイレクトメール
- お客様各位への「資料送付のご案内」
- 株主への、ご優待品贈呈のご案内
- 各種行事案内書
などです。
一度に大量にまとめて印刷したばあい、全てをその日に発送するとはかぎりません。
また、送付先を調べてその都度だしていると、作成日と発送日の間隔が大きくなってきます。
「○月吉日」としておけば、その月のうちに発送すればよいのですから、事務処理上とても便利で実用的です。
作成日を明記するまでもないとか、明記することで生じる不都合とか、明記しない便利さを考え、あえて「○月吉日」というぼかした表現にしているのです。
その意味からすれば、「◯月某日」にしてもよさそうですが、さすがに「某日」は使いづらいです。
ですから、「某日」のかわりに「吉日」を使っているのです。
つまるところ、
「作成日をはっきりさせず、あいまいにしておきたい」という気持ちを具現化したものが「○月吉日」なのです。
回覧板で各戸に回っていくお知らせなど、地域の状況によっては全員に配布されるのに、10日以上かかる場合もあります。
作成日が明記されている文書だと、人によっては、「なんでこんなに遅く届くんだ」と不快に感じるかもしれません。
だからその対策として、あえて「◯月吉日」として作成日をぼかすのです。
作成日が重要な意味をもたない文書
契約書や請求書や領収書や見積書や稟議書など、ビジネス文書においては、その書類の作成日は重要な意味をもっています。
そのため、ビジネス文書においては、日付を「○月吉日」とぼかした表現にすることはありませんし、許されません。
しかし、
「◯月吉日」と表記している文書の場合、読んでみるとその内容からして作成日付が重要な役割を担っている思えません。
言葉を変えれば、文書の差出人と受取人との間で、作成日付が争いの場に持ち込まれることは考えられません。
結局、いつ書いたかは問題にならないので、文書を出す側の利便性を優先して「◯月吉日」としているのです。
「5月吉日」の日付で印刷された文書であれば、5月中ならいつ渡しても、いつ発送してもよいわけで、出す方にしてみればとても便利です。
ただ、受け取る側にもいろんな人がいます。
「不幸続きだというのに、吉日と書いて送りつけるとは、嫌がらせか」と理不尽な怒りを買うことがあるかもしれません。
人はそれぞれ、難しいですね・・・
「○月吉日」の月をまたぐ使い方は失礼になる?
結婚式の案内状は式の2ヶ月前に出すものといいます。
挙式が4月27日なら2月の佳き日を選び「2月吉日」の日付でだしますよね。
でも投函日が2月末になれば、3月になってから受け取る人もいるということです。
これって、「招待者に対して失礼なことにならないの?」と心配する人がいますが、全く問題はなく、失礼なことでもありません。
日付は、「その日にだしました」ということを表しているだけです。
2月に投函すれば、とうぜん2月の日付になります。
2月の佳き日を選んだ「2月吉日」で3月に届こうが問題ありませんし、
普通の人なら、そんなことに目くじらを立てるるようなことはしません。
実際に月をまたいで受け取った人のほとんどは、
- 「気づいても一瞬、あれっ?思っただけで、たいしたことじゃないので、すぐ忘れました。」
- 「私、なんとも思いませんでした。」
- 「郵便屋さんが遅かったのかな?くらいですかね。」
- 「特に気になりませんでした。」
- 「注意して読んだのは挙式の日時と場所。差出し日なんかあとから気づいた程度。」
など、本人が思うほど、受け取った人は差出し日なんか気にもかけていませんので、安心してください。
まとめ
吉日とは、「祝い事などをするのに良い日がら」「縁起が良い日」「めでたい日」であることを意味し、大安、天赦日、一粒万倍日、寅の日がよく知られています。
ただ、科学的に証明されているわけではないので、生活の潤滑油として上手に付き合えれば良いと考えます。
「○月吉日」は慶事の案内状にはよく使われる日付の書き方です。
ただ、慶事でなくても、手紙や文書の日付をわざとぼかしたいとか、日付を明記する必要もない文書などの場合には「○月吉日」はよく使われています。
これは、一つの知恵ですね。