「前略」は、手紙の冒頭に使う簡略的な頭語で、「ご挨拶を省略し、要件をお伝えします」という意味を持ちます。
この記事では、「前略」の正しい意味や使える場面、そして結びの言葉として使う「草々」や「かしこ」の選び方や例文を分かりやすくご紹介します。
「前略」の意味と使い方
「前略」は、手紙の冒頭に使う頭語のひとつで、時候の挨拶や安否伺いなどを省略する意図を示す言葉です。
親しい相手に、急ぎの用件を簡潔に伝える際に用いられます。
例文:
前略 ○○の件につきまして、取り急ぎご報告申し上げます。
前略に合わせる結び言葉は「草々」「かしこ」
「前略」を使った手紙では、文末を「草々」または「かしこ」で締めくくります。それぞれ使う相手や意味が異なるため注意が必要です。
「草々」の意味と使い方
「草々(そうそう)」は、取り急ぎ書いた手紙で結びに用いる言葉で、「粗略にて失礼します」といった意味があります。
使用例:
前略 このたびの件、了解いたしました。
取り急ぎご報告まで。
草々
使える相手: 親しい間柄、同僚、ビジネス上の急報など
使わないほうがいい相手: 目上の方、取引先の重役など
NG例:
草々 またご連絡させていただきます。
※草々は文末表現なので、単独の文頭には使いません。
「かしこ」の意味と使い方
「かしこ」は、女性が書く手紙の結び言葉で、「これで失礼いたします」といった丁寧なニュアンスを含みます。
使用例:
前略 ○○の件、お返事ありがとうございました。
取り急ぎお礼まで申し上げます。
かしこ
使える相手: 女性から親しい相手、または丁寧に伝えたい相手
「かしこ」は女性が用いる結語とされており、男性が手紙の結びに使うのは一般的ではありません。
NG例:
前略 ○○の件、ご確認願います。
草々かしこ
※草々とかしこは両方使わず、どちらか一つを選びます。
「前略」が使える場面と注意点
「前略」は親しい間柄で使うのが基本です。ただし、親しくても謝罪や感謝の手紙には避けた方がよいケースもあります。
- ○ 急ぎの用件連絡(同僚・親族など)
- × 目上の方への丁寧な手紙
- × 礼状やお詫び状(拝啓~敬具が適切)
ビジネスで使う場合:社内文書や事務的な報告書などでは、「前略…草々」が使われることがあります。ただし、外部宛や上司宛には避けましょう。
丁寧にしたい場合の書き出し例:
前略失礼いたします。○○についてご報告申し上げます。
「前略」を使わない方がよいケース
以下のような場合には、「前略」は避け、「拝啓」などの正式な頭語を使いましょう。
- 目上の方・上司への手紙
- ビジネスメール(メールでは「お世話になっております」が一般的)
- お詫び・お礼の手紙
「前略」のNGな使い方例
「前略」は、あいさつを省略する表現なので、後に時候の挨拶や安否を続けるのは誤用です。
誤った書き方:
前略 皆さまいかがお過ごしでしょうか。
前略 樹木の葉も色づき始めた今日この頃…
上記のように、挨拶を続けると「前略」の意味と矛盾してしまいます。
前略を使った例文集
ここでは「前略」から始まる手紙の文例を、使える場面ごとにご紹介します。それぞれの手紙がどのような相手・目的に適しているかもあわせて解説します。
- 【私信:親しい人へのお礼】
前略 先日はお越しいただきありがとうございました。
温かなお心遣いに心より感謝申し上げます。
取り急ぎお礼まで。
草々
▶ 親しい友人や親族に、来訪や贈り物のお礼を伝える際に適しています。 - 【ビジネス:社内連絡・事務報告】
前略失礼いたします。
先日の貴社との打ち合わせ内容につきまして、以下の通り確認いたしました。
ご査収のほどお願い申し上げます。
草々
▶ 社内関係者や部署間の連絡文書に。外部や目上の方には避けましょう。 - 【ビジネス:納期遅延の連絡】
前略失礼いたします。
ご注文いただきました商品につきまして、諸事情により納期が○月○日に変更となります。
何卒ご理解くださいますようお願い申し上げます。
草々
▶ 丁寧なトーンを保ちながらも、急ぎの連絡として前略が活用されています。 - 【私信:楽しかった時間へのお礼(女性)】
前略 先日は楽しいひとときをありがとうございました。
心に残る素敵な時間を過ごせて、嬉しく思っております。
取り急ぎお礼まで申し上げます。
かしこ
▶ 女性が親しい相手に感謝を伝えるときに使える表現です。 - 【私信・ビジネス共通:簡潔な要件連絡】
前略 ○○の件につきまして、以下の通りご連絡いたします。
資料は○月○日に送付予定です。
取り急ぎご報告まで。
草々
▶ 用件中心の手紙や回覧文など、簡潔さが求められる場面で使用します。
まとめ:草々とかしこを使い分けて好印象の手紙を
「前略…草々」「前略…かしこ」は、急ぎの手紙や親しい相手に要点だけを伝えたいときに便利な表現です。
ただし、相手や状況によっては、形式ばった「拝啓…敬具」の形式を選ぶべき場合もあります。
それぞれの意味と使い方を理解し、適切な表現を選ぶことで、丁寧かつ伝わりやすい印象の良い手紙を書くことができます。
臨機応変な使い分けで、手紙の印象がぐっと変わります。