「標記の件」はメールでよく使われる表現ですが、意味が曖昧なまま使ってしまう人も多い言い回しです。この記事では意味・使い方・目上への使用可否・使わない方がよいケース・表記の件との違い・例文・言い換えまで、一度でわかるように整理します。
「標記の件」とは?基本の意味と使い方
「標記(ひょうき)」とは「文書やメールに記載されたタイトル・標題」を意味します。つまり「標記の件」とは、件名や標題に記した内容について触れるときに使う表現です。
「標記の件」の例文
- 標記の件につきまして、以下の通りご案内申し上げます。
- 標記の通り、本日の会議は15時から開始いたします。
件名に書いた内容を本文で改めて示すときに使うのが「標記の件」です。
標記の件は目上の人に使ってもいい?
「標記の件」は、ビジネス文章で広く使われる正式な表現のため、目上の相手に使っても問題ありません。
むしろ「件名に関連した内容を説明します」という意図が明確に伝わるため、フォーマルな文書として適しています。
ただし、やや堅く事務的な印象を与えるため、社内の同僚とのやり取りやフランクなメールでは不自然になることもあります。
迷う場合は、「〇〇について」などシンプルな表現に置き換えるのが安全です。
標記の件は使わない方がいいと言われる理由
「標記の件」は便利な表現ですが、近年はビジネスメールの簡素化が進んでおり、相手に堅苦しい・古い印象を与えることがあります。
特に次のようなデメリットが指摘されています。
- 件名と本文で同じ内容を繰り返すことになる
- 相手に回りくどく感じられる可能性がある
- 若いビジネスパーソンには馴染みが薄く誤解されやすい
- 読み手の負荷を増やす(読み飛ばされやすい)
そのため、重要な相手や丁寧さが必要な場面では使って問題ありませんが、普段のメールではシンプルに書いた方が伝わりやすい場合が多くあります。
「表記の件」との違い
「表記(ひょうき)」は「文字や記号を記すこと」を意味します。「表記の件」とは、文書やメール本文に書かれた内容に言及するときに使う表現です。
「表記の件」の例文
- 表記の通り、申請書の提出期限は3月15日です。
- 表記の件について、詳細を補足いたします。
比較表で整理
| 用語 | 意味 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 標記の件 | 件名や標題に書かれた内容 | メール件名・文書標題に関する話題 |
| 表記の件 | 本文に書かれた内容 | メール本文に関する話題 |
「標記の件」を使うときのビジネスメール例文
実際のメールでの使い方を見てみましょう。
会議案内メール
件名:〇〇会議のご案内
本文:
営業部の田中です。標記の件につきまして、以下の通りご案内いたします。
日時:〇月〇日 15時〜
場所:会議室A
依頼メール
件名:資料提出のお願い
本文:
標記の件につきまして、〇月〇日までにご対応いただけますようお願い申し上げます。
謝罪メール
件名:納品遅延のお詫び
本文:
標記の件につきまして、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
督促メールの例文
件名:資料ご提出のお願い(再送)
本文:
標記の件につきまして、再度ご連絡申し上げます。
先日ご依頼いたしました資料につきまして、まだご提出が確認できておりません。
お忙しいところ恐れ入りますが、〇月〇日までにご対応いただけますと幸いです。
共有メールの例文
件名:会議資料の共有について
本文:
標記の件につき、関連資料を添付にて共有いたします。
ご確認のうえ、必要に応じてご活用くださいませ。
日程調整メールの例文
件名:打ち合わせ日程の調整について
本文:
標記の件につきまして、以下の日程で調整をお願いできますでしょうか。
・〇月〇日(〇) 10:00〜
・〇月〇日(〇) 14:00〜
ご都合のよい日時をお知らせいただければ幸いです。
関連のメール文例はこちら:
「表記の件」を使うときのビジネスメール例文
件名:新製品の仕様変更について
本文:
表記の件につきまして、追加の仕様変更がございましたのでお知らせいたします。
この場合、「表記の件」はメール本文に記された「仕様変更の内容」に触れています。
「標記の件」を使わないシンプルな言い換え
「標記の件」「表記の件」は便利な言い回しですが、件名や本文の内容をそのまま書けば、よりシンプルで伝わりやすい表現になります。
あわせて読みたい:
「標記の件」を使わない例(件名に対応)
従来の表現(やや堅い):
標記の件につきまして、ご確認をお願いいたします。
改善後(シンプル):
〇〇について、ご確認をお願いいたします。
👉 「標記の件」は件名に書いたことに触れる表現。件名そのものを本文に書けば十分です。
「表記の件」を使わない例(本文に対応)
従来の表現(やや堅い):
表記の件につきまして、ご報告申し上げます。
改善後(シンプル):
〇〇について、ご報告いたします。
👉 「表記の件」は本文に書いたことに触れる表現。本文の内容をそのまま示せばOKです。
標記と表記の違いを図で整理
| 表現 | 指す内容 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 標記の件 | 件名・標題に書かれた内容 | 件名を受けて本文を始めるとき |
| 表記の件 | 本文に記載された内容 | 本文の内容を改めて示すとき |
このように整理すると、「標記の件」と「表記の件」の違いが直感的に理解できます。
シンプルな言い換え一覧
「標記の件」「表記の件」を使わずに、読み手にストレートに伝える言い換え表現をまとめました。
- 〇〇について
- 〇〇の件
- 〇〇のお知らせ
- 〇〇のご案内
- 〇〇の件でご連絡しました
- 上記の件について
- 以下の内容について
読者にとっては、簡潔・具体的な表現の方が理解しやすく、読みやすいメールにつながります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 「標記の件」は目上の人に使ってもよい?
ビジネス上のフォーマル表現なので、目上の人に使っても問題ありません。ただし、やや堅苦しい印象があるため、相手や文脈によっては「〇〇について」と直接書いた方が自然です。
Q2. 件名に「標記の件」と書いてもいいの?
件名に「標記の件」と書くのは一般的ではありません。件名は「会議のご案内」「納品について」など具体的に書き、本文で「標記の件につきまして〜」とつなげるのが適切です。
Q3. 「標記の件」を英語にすると?
英語に直訳すると “Regarding the subject above” が近いですが、ビジネスメールでは “Regarding ○○” や “About ○○” とシンプルに表現するのが一般的です。
間違いやすい似た表現との違い
「標記の件」と似た言い回しもあります。混同しないように整理しておきましょう。
| 用語 | 意味 | 用途 |
|---|---|---|
| 表題の件 | 文書全体のタイトル | 論文・報告書の題名 |
| 標題の件 | 章や小見出しのタイトル | 文書内の小見出し |
| 掲題の件 | 主に社内で用いられる造語 | メールの件名だが使用は限定的 |
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まとめ
「標記の件」と「表記の件」は似ていますが、意味と使いどころは異なります。
- 標記の件:件名や標題に関する内容
- 表記の件:本文に書かれた内容
- シンプルにするなら「標記の件」を使わず直接書いてもOK
使い分けを意識することで、より明確で伝わりやすいビジネスメールになります。

