大切な人が亡くなった時、悲しみの中で遺族を気遣う気持ちを伝えるのが「お悔やみの手紙」です。しかし、いざ書こうとすると「どんな言葉を選べばいいんだろう」「マナーは大丈夫かな」と、手が止まってしまうこともありますよね。
この手紙は、故人への感謝や哀悼の意、そして遺族への心遣いを伝える大切なものです。私もこれまで、大切な人を亡くされた方へ手紙を書く機会があり、その度に言葉の選び方に頭を悩ませてきました。
この記事では、お悔やみの手紙を書く際に知っておきたい基本的なマナーから、相手別・状況別の具体的な例文まで、じん兵衛流の「心に寄り添う」手紙の書き方を徹底解説します。ぜひ、あなたの「伝えたい」気持ちを形にするためのお役に立てれば嬉しいです。
お悔やみの手紙の基本マナーと構成
お悔やみの手紙には、いくつか守るべきマナーがあります。形式的なことかもしれませんが、これらを守ることで、より丁寧な気持ちが伝わります。
1. 手紙を送る時期と方法
お悔やみの手紙は、訃報を聞いてからできるだけ早く、できれば葬儀後1週間以内に送るのが一般的です。葬儀に参列できなかった場合や、香典を郵送する際に添えるのが自然です。
ただし、ご遺族が非常に忙しい時期なので、訃報を受けてすぐ送るよりも、四十九日前に届くように手配するのが良いでしょう。もし時間が経ってしまった場合は、「後日」の項目で詳しく解説します。
送付方法は、郵送が最も丁寧です。メールやSNSでの連絡は、親しい間柄で相手が希望している場合を除き、避けた方が無難です。
2. 封筒・便箋・筆記具の選び方
- 便箋: 白無地で、縦書きのものが正式です。罫線が入っていても構いません。枚数は1枚にまとめるのが理想ですが、書きたいことが多ければ2枚になっても問題ありません(ただし、3枚以上は避けるのが一般的です)。
- 封筒: 白無地の一重封筒を選びましょう。不幸が重なることを連想させる二重封筒は避けるのがマナーです。郵便番号欄や絵柄のないものを選びましょう。
- 筆記具: 万年筆や筆ペン、ボールペンなど、黒または濃い青のインクを使用します。インクの色が薄いものや、鉛筆は避けましょう。
3. 頭語・結語、時候の挨拶は不要
通常の手紙で使う「拝啓」「敬具」のような頭語・結語は不要です。「時候の挨拶」も省略します。悲しみの中で、簡潔に気持ちを伝えることが大切だからです。
4. 忌み言葉・重ね言葉を避ける
「重ね重ね」「くれぐれも」「たびたび」など、不幸が繰り返すことを連想させる重ね言葉(忌み言葉)は避けるのがマナーです。また、「死亡」「生きる」「苦しむ」「迷う」といった直接的な言葉も避けて、「ご逝去」「ご生前」「ご愁傷様」などの婉曲な表現を使いましょう。
【主な忌み言葉・避けたい表現の例】
避けたい表現 | 代替表現の例 |
---|---|
重ね重ね | 心より、深く |
たびたび | とりあえず、まずは |
死亡 | ご逝去、他界 |
生きる | ご生前 |
苦しむ | お辛いことと存じます |
迷う | お気持ちを察します |
追って | 後日改めて |
続く | 次々 |
再び | 改めて |
急死 | 突然のご訃報 |
頑張って | ご自愛ください、お身体を大切にしてください |
頑張ってください | 無理をなさらないでください |
諦めて | (この表現は使わない) |
ご存命 | ご生前 |
存命中 | ご生前 |
元気です | お変わりなく、つつがなく |
忙しい | ご多忙中 |
忙中 | ご多忙中 |
早く | 早くも(月日が経つことを表現する際) |
また、再び | 再び、改めて |
涙 | ご心痛、ご愁傷様 |
苦しみ | ご心痛、ご苦労 |
悲しい | お心を痛める、お悲しみ |
5. 句読点を使わない(句読点なし)
お悔やみの手紙では、句読点「、」「。」を使わないのが伝統的なマナーとされています。これは、「滞りなく筆が進むように」という配慮や、「一区切りつけない」という意味合いがあると言われています。代わりに、改行やスペースで区切りをつけましょう。
6. 基本的な構成
お悔やみの手紙は、以下の構成で書くとスムーズです。
- 訃報を聞いたことへのお悔やみと驚き
- 「〇〇様の突然のご訃報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます」
- 故人への哀悼の意
- 故人との具体的な思い出や、故人の人柄を称える言葉を短く添えると、より気持ちが伝わります。
- 遺族への配慮の言葉
- 「ご遺族の皆様のお悲しみを思うと 胸が締め付けられる思いでございます」など、心に寄り添う言葉を伝えます。
- 自分にできることがあれば、という申し出(無理のない範囲で)
- 「何かとお忙しいこととは存じますが どうぞご無理なさらないでください」
- 「私にできることがございましたら 何なりとお申し付けください」
- 故人の冥福を祈る言葉
- 「故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます」
- 日付・署名・宛名
- 日付は月のみでも可。差出人の氏名、そして喪主または遺族代表の名前を記載します。
相手別のお悔やみの手紙例文とポイント
関係性によって、手紙のトーンや内容も変わってきます。相手への敬意と、あなたらしい心遣いを表現しましょう。
1. 親戚へのお悔やみの手紙
親戚への手紙は、丁寧さを保ちつつも、故人や遺族との親しい関係性を反映した言葉を選ぶことができます。
【ポイント】
- 故人との具体的な思い出や、遺族を案じる気持ちを率直に表現しやすい。
- 家族間の連絡網を把握している場合は、手紙を送るタイミングにも配慮する。
【例文1:一般的な親戚宛】
〇〇様のご逝去の報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます
あまりに突然のことで 驚きを隠せません
ご生前はいつもお優しく 温かく私たちを見守ってくださった〇〇様
思い出が尽きません
ご遺族の皆様のご心痛はいかばかりかとお察しいたします
お力落としのことと存じますが どうぞご無理なさらないでください
遠方のため駆けつけることができず 誠に申し訳ございません
心ばかりではございますが 御香典を同封いたしましたので お納めください
〇〇様のご冥福を心よりおお祈り申し上げます
令和〇年〇月 (あなたの氏名) 〇〇様
【例文2:親戚宛 短い手紙(故人との親しい間柄を伝える)】
〇〇叔父様のご逝去の報に接し 心よりお悔やみ申し上げます 突然のことで信じられない気持ちでいっぱいです いつも笑顔で私たちを励ましてくださった叔父様 もっとお話ししたかったと悔やまれてなりません 〇〇様(喪主の名前)をはじめご家族の皆様のお悲しみを思うと 胸が張り裂けそうです どうぞお体をお大切になさってください 心ばかりのお供えを同封いたしました 安らかなご永眠を心よりお祈り申し上げます
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
〇〇様
2. 友人へのお悔やみの手紙
友人へは、よりパーソナルな感情を込めて、故人との思い出を共有するような表現も適切です。遺族への配慮も忘れずに。
【ポイント】
- 故人である友人の人柄や、共有した思い出を具体的に書くと、遺族にとっても慰めになる。
- 遺族である共通の友人や、故人の家族への気遣いを加える。
【例文1:友人宛 一般的な手紙】
〇〇さんのご逝去の報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます
突然のことでまだ信じられず 途方に暮れています
〇〇さんとは学生時代からたくさんの思い出を共にしました
いつも明るく周りを笑顔にしてくれた〇〇さんのことを忘れません
ご家族の皆様のお悲しみはいかばかりかとお察しいたします
心よりお悔やみ申し上げますとともに
どうかお体を大切になさってください
遠方よりご冥福を心よりお祈り申し上げます
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
〇〇様(故人の家族名)
【例文2:友人宛 短い手紙(故人との絆を伝える)】
〇〇さんの訃報に接し 驚きと悲しみでいっぱいです
いつも私を支え励ましてくれた〇〇さん
心から感謝しています
安らかな眠りにつかれたことを祈るばかりです
ご家族の皆様におかれましても どうぞご無理なさらないでください
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
〇〇様
3. 会社関係者へのお悔やみの手紙
上司や同僚、取引先など、会社関係者へのお悔やみの手紙は、私的な感情を抑え、より丁寧でビジネスライクな表現を心がけます。
【ポイント】
- 簡潔に、かつ礼儀正しく。
- 故人の仕事に対する姿勢や功績に触れる場合は、事実に基づき簡潔に。
- 遺族への配慮が第一。
【例文1:上司・同僚の家族宛】
〇〇様のご逝去の報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます
〇〇様の突然のご訃報に接し 驚きと悲しみを深くしております
在りし日の〇〇様は 常に私たちを温かく指導してくださり
そのお人柄とご功績は忘れられません
ご遺族の皆様のご心痛はいかばかりかと拝察申し上げます
心よりお悔やみ申し上げますとともに
どうかご無理をなされませんようお祈り申し上げます
略儀ながら書中をもちまして 心よりご冥福をお祈りいたします
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇様(喪主の名前)
【例文2:取引先関係者宛】
株式会社〇〇 〇〇様
〇〇様ご逝去の報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます
ご生前は大変お世話になり 誠にありがとうございました
〇〇様のご功績を偲び 深くご冥福をお祈り申し上げます
ご遺族の皆様におかれましては さぞご心痛のことと存じます
皆様が一日も早くお気持ちを立て直されますよう 心よりお祈り申し上げます
まずは書面にてお悔やみ申し上げます
令和〇年〇月
株式会社△△ (あなたの氏名)
状況別のお悔やみの手紙例文とポイント
手紙を送るタイミングや故人との関係性によって、言葉の選び方に工夫が必要です。
1. 時間が経ってから送るお悔やみの手紙(後日)
訃報を知るのが遅れたり、相手の状況を考慮したりして、四十九日を過ぎてから手紙を送ることもあります。その場合は、遅れたことへのお詫びと、配慮の言葉を添えましょう。
【ポイント】
- 手紙が遅れたことへのお詫びを簡潔に述べる。
- 遺族が落ち着いた頃合いを見計らって送る。
- 香典を同封する場合は「遅れて申し訳ありませんが」といった言葉を添える。
【例文1:四十九日を過ぎてから送る場合】
〇〇様のご逝去の報に接し 大変遅ればせながら 謹んでお悔やみ申し上げます
ご通知をいただきながら ご連絡が遅れましたこと 誠に申し訳ございません
ご生前は公私にわたり大変お世話になりました〇〇様
そのお人柄を偲び 心よりご冥福をお祈り申し上げます
ご家族の皆様には さぞご心痛のことと存じます
皆様が少しでもお心を癒されますよう心よりお祈り申し上げます
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
〇〇様
【例文2:香典を同封する場合】
〇〇様のご逝去の報に接し 大変遅ればせながら 謹んでお悔やみ申し上げます
ご通知をいただきながら ご連絡が遅れましたこと 誠に申し訳ございません
ご生前は格別のご厚情を賜り 深く感謝申し上げます
心ばかりではございますが 御香典を同封いたしましたので お納めいただければ幸いです
ご遺族の皆様におかれましても どうぞご無理なさらないでください
改めて 故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
〇〇様
2. 遺族への手紙(特定の方へ)
「遺族への手紙」として、故人の配偶者、あるいは両親など、特定の遺族に向けて書く場合は、その方への気遣いをより深く表現します。
【ポイント】
- 手紙の冒頭で、その方への敬意と心配の気持ちを伝える。
- 故人との関係性や、故人の人柄に触れる言葉も加える。
- 遺族の今後の生活を気遣う言葉も添える。
【例文1:配偶者へのお悔やみ】
〇〇様(喪主の名前)
〇〇様のご逝去の報に接し 心よりお悔やみ申し上げます
奥様(ご主人様)のお悲しみはいかばかりかとお察し申し上げます
〇〇様はいつも〇〇さんのことを大切にされていました
ご生前はご夫婦で私共を温かく見守ってくださり 感謝の念に堪えません
どうぞご無理なさらないでください
何かお力になれることがございましたら ご遠慮なくお申し付けください
〇〇様のご冥福を心よりお祈り申し上げます
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
【例文2:故人の子供へのお悔やみ(若い世代へ)】
〇〇様(お子さんの名前)
お父様(お母様)のご逝去の報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます
突然のことで 〇〇さんの悲しみは計り知れないと存じます
ご生前のお父様(お母様)は 〇〇さんのことをいつも誇りに思っていらっしゃいました
私もいつもお世話になり 大変感謝しております
今は無理をせず お体を大切にしてください
私にできることがあれば いつでも力になりますので ご連絡ください
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
故人別のお悔やみの手紙例文(父母・夫・妻など)
故人がご両親や配偶者の場合、遺族の悲しみは特に深いものです。故人への敬意と、遺族への心からの配慮を込めて手紙を書きましょう。
1. 故人がご両親の場合(友人・知人の親)
【ポイント】
- ご自身の親でなくとも、その影響力は大きいことを理解し、敬意を払う。
- 故人の人柄や、遺族との関係性に触れると、より慰めになります。
【例文:友人のお母様が亡くなった場合】
〇〇(友人の名前)へ
お母様のご逝去の報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます
〇〇の悲しみはいかばかりかと 心を痛めております
ご生前はいつも私にも優しく接してくださり 感謝の念に堪えません
〇〇のお母様は いつも温かい笑顔で周りを明るくする方でした
今はとにかく無理をせず お体を大切にしてください
落ち着いたら またゆっくり会って話そうね
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
2. 故人が配偶者の場合(友人・知人の夫・妻)
【ポイント】
- 遺族の深い悲しみに寄り添う言葉を選ぶ。
- 故人との良い思い出に触れることで、故人の存在が遺族の中で生き続けることを示唆する。
【例文:友人のご主人が亡くなった場合】
〇〇(友人の名前)へ
ご主人様のご逝去の報に接し 謹んでお悔やみ申し上げます
〇〇の悲しみは言葉では言い表せないほどと存じます
ご生前の〇〇さんは とても素敵な方で 〇〇のことをいつも大切にされていました
お二人の仲睦まじい姿は 私たちの憧れでした
今はただ ただ悲しみに暮れることと思います
無理に元気を出そうとせず どうかご自身を大切にしてください
私にできることがあれば いつでも力になるからね
令和〇年〇月
(あなたの氏名)
お悔やみの手紙を書く際の「じん兵衛流」心構え
じん兵衛も色々な経験をしてきた中で、お悔やみの手紙は単なる形式ではなく、「心と心を繋ぐもの」だと感じています。
- 素直な気持ちを込める: マナーは大切ですが、最も重要なのは、故人への哀悼の気持ちと、遺族への心からの配慮です。形式にとらわれすぎず、あなた自身の言葉で素直な気持ちを伝えましょう。
- 無理に慰めようとしない: 遺族は深い悲しみの中にいます。無理に励ましたり、立ち直りを急かしたりする言葉は避け、「悲しみに寄り添う」姿勢が大切です。
- 「私にできること」を具体的に伝える: もし手伝いができるなら、「何かあればいつでも声をかけてね」という抽象的な言葉だけでなく、「もしお子さんの送り迎えが必要なら」「落ち着いたらご飯でも行こう」など、少し具体的な提案をするのも良いでしょう。ただし、相手に負担をかけないよう、あくまで「申し出」の形に留めることが重要です。
- 故人を美化しすぎない: 故人の人柄を称えるのは良いことですが、知らないことを書いたり、故人を過度に美化するような表現は避けましょう。
まとめ:あなたの心遣いが、悲しみに寄り添う手紙に
お悔やみの手紙は、悲しみの淵にいる遺族にとって、故人を偲び、心を慰める大切なメッセージとなります。
この記事で紹介したマナーや例文は、あくまで「型」に過ぎません。最も大切なのは、故人を悼む気持ちと、遺族を気遣うあなたの心です。
渡しの願いは、この手紙が、あなたの真心が伝わる温かいメッセージとなり、遺族の皆様の心の支えとなることです。どうか、無理のない範囲で、あなたの気持ちを伝える手紙を書き上げてくださいね。