お寺の方に手紙を書くとき、「和尚様」と書くべきか「住職様」と書くべきか迷ったことはありませんか？
お寺に関する言葉には、聞き慣れないものが多く、特に「和尚（おしょう）」と「住職（じゅうしょく）」は混同されがちです。しかし、この二つの言葉には明確な違いがあります。
この記事では、和尚と住職の意味の違いをわかりやすく解説し、手紙に適した呼び方や敬称の使い方も具体的にご紹介します。
和尚と住職はどう違う？基本的な意味を解説
手紙での使い分けを考える前に、まずは「和尚」と「住職」という言葉の意味を整理しておきましょう。
和尚とは？主に禅宗で使われる敬称
「和尚（おしょう）」は、本来、中国語の「和上（わじょう）」が語源で、師匠や導師といった意味をもつ敬称です。
日本では特に禅宗（曹洞宗、臨済宗、黄檗宗など）の僧侶に対して使われることが多く、一般の人にとっては「お坊さん」の敬称として広く知られています。
テレビや映画などで登場する「和尚さん」は、たいてい禅宗系のお寺の住職を指していることが多く、それが「和尚＝お寺の偉い人」というイメージにつながっているのでしょう。
住職とは？お寺を運営する責任者の肩書き
一方、「住職」とは、そのお寺に住み、職務を担う僧侶を指す正式な役職名です。
つまり、実際にその寺院の運営や管理、法事・法要などを担当する責任者のことを指します。
たとえば、あるお寺に2～3人の僧侶がいても、その中で「住職」は1人だけです。
この「住職」という呼び方は、宗派を問わず使われる一般的な肩書きです。
なぜ混同されやすい？和尚と住職の使い分けの背景
意味が違うとわかっても、なぜこれほど混同されているのでしょうか？
その背景には、言葉の慣用的な使い方や、宗派ごとの文化の違いがあります。
かつての「和尚＝僧侶一般」というイメージ
かつては、僧侶に対して親しみを込めて「和尚さん」と呼ぶことが一般的でした。
特に地方では「住職」という言葉よりも「和尚さん」が浸透しており、敬意をこめた日常語として定着しています。
そのため、住職であっても「和尚様」と呼ばれることがあるのです。
住職は役職名、和尚は敬称という違い
大きな違いは、「住職」が肩書きであるのに対し、「和尚」は敬称だということです。
つまり、住職という役職をもつ僧侶に対して、敬意をこめて「和尚様」と呼ぶことがあり、これは仏教界の中でも容認されている使い方です。
したがって、厳密な分類では違っていても、現実的な使い方としては重なる場面もあるのです。
手紙に使うならどっち？失礼にならない呼び方は
では、いざ手紙を書くときに「和尚様」と「住職様」のどちらを使えばよいのでしょうか？
正確に書くなら「住職様」または「○○住職」
相手がどのお寺の住職かわかっている場合は、「（僧侶の姓）住職様」または「住職 （僧侶の姓）様」と書くのが基本です。
これは、ビジネスで「課長 ○○様」と書くのと同じで、敬称の重複を避けた丁寧な表現です。
ただし、仏教界では「住職様」という表現も日常的に使われており、失礼にあたることはありません。
禅宗のお寺や親しみを込めるなら「和尚様」も可
禅宗のお寺や、普段から「和尚様」と呼ばれているような方であれば、「和尚様」と書いても差し支えありません。
ただし、宗派によっては「和尚」という呼び方をあまり使わないこともあるため、不安な場合は「住職様」にしておくのが無難です。
手紙での具体的な書き方と例文
ここでは、実際に手紙を書く際の宛名や文中での呼び方をご紹介します。
宛名の書き方
以下は、封筒や便箋での宛名の一例です。
〒XXX-XXXX
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇
〇〇寺
御住職様
〒XXX-XXXX
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇
〇〇寺
佐藤住職様
または
〒XXX-XXXX
〇〇県〇〇市〇〇区〇〇
〇〇寺
和尚様
「住職様」や「和尚様」と書くべきか、「御中」でよいのか迷った方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
👉 神社やお寺への宛名に「御中」は使える？正しい敬称の使い分けはこちら
本文での呼びかけ例
手紙の冒頭では、以下のように書くのが丁寧です。
- 丁寧な表現：
「〇〇寺御住職様には、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。」
「日頃より、〇〇寺住職様には大変お世話になっております。」 - 「和尚様」を使う場合（禅宗寺院など）：
「〇〇寺御和尚様には、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。」
「いつも〇〇寺和尚様には、ご指導いただき心より感謝申し上げます。」
拝啓 佐藤住職様には、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
または
拝啓 和尚様におかれましては、ご健勝のことと拝察いたします。
どちらも丁寧な言い回しであり、違和感なく使えます。
住職様は2重敬称で正しくないのでは？
「住職様」という表現については敬称の二重付け（重複）になるのでは？という疑問がよく挙がります。
以下に整理してお答えいたします。
ビジネス文書での原則
「課長様」「部長様」など、肩書きに「様」を付けるのは誤りとされています。
- ❌「佐藤課長様」ではなく、
- ✅「課長 佐藤様」または「佐藤様」とするのが正しい。
これは敬称の重複（二重敬語）になるためです。
では「住職様」はどうなのか？
仏教界・お寺においては、「住職様」「和尚様」などの使い方は慣例として認められているケースが多いです。
以下のような点が背景にあります：
一般人からお坊さんに出す手紙では
- 「住職」や「和尚」がすでに敬意を含む語であるにもかかわらず、
- さらに「様」をつけて「住職様」「和尚様」と書くのは形式的には二重敬語になります。
→ しかし現実には、お寺とのやりとりで「住職様」とするのが丁寧で礼儀正しい表現として広く使われています。
現実的な結論
| 表現 | 評価 | 補足 |
|---|---|---|
| 佐藤住職様 | ◎ よく使われる／丁寧な表現（お寺宛手紙では一般的） | |
| 住職 佐藤様 | ○ 丁寧であり、形式としてはこちらが正しい | |
| 佐藤様（役職なし） | △ 関係性によってはやや軽く感じる可能性あり |
手紙・封筒でどう使い分ける？
- 封筒の宛名や手紙の冒頭：
→「○○寺 佐藤住職様」…OK（実務的・丁寧） - 形式にこだわる場合やビジネスライクな文書：
→「住職 佐藤様」…より厳密で格式を重んじた表現
疑問をまとめると
✅ 「住職様」「和尚様」は厳密には二重敬語ですが、
✅ 宗教的な敬意表現としては一般的かつ容認されている言い回しです。
✅ よって、一般の人が住職宛に出す手紙では「佐藤住職様」や「住職様」で問題ありません。
補足：僧侶の呼称には他にも種類がある？
お寺には住職以外の僧侶が在籍していることもあります。
手紙の宛先を間違えないように、肩書きや立場も確認しておきましょう。
副住職・院代・長老などの呼び方
- 副住職（ふくじゅうしょく）： 住職を補佐する役職で、次期住職となることが多いです。
- 院代（いんだい）： 住職が不在の場合に、代理として寺務を代行する僧侶を指します。
- 長老（ちょうろう）： 徳の高い年長の僧侶や、特定の役職に就いている僧侶を指すことがあります。宗派によって使い方が異なります。
- 大和尚（だいおしょう）： 禅宗で、特に徳の高い高僧に対して使われる敬称です。
大きなお寺では「副住職」「院代（いんだい）」「長老」などの肩書きの僧侶がいることもあります。
その場合は、「副住職 ○○様」など、肩書きと名前の順に表記するのが丁寧です。
宗派による呼び方の違いにも配慮を
日本の仏教は多くの宗派に分かれており、宗派によって僧侶の呼び方や役割が異なります。
例えば、真言宗や天台宗では「大僧正（だいそうじょう）」、浄土真宗では「ご院家様（ごいんげさま）」といった独自の呼び方があります。手紙を送る際には、可能であれば事前に相手の宗派を確認し、適切な呼称を用いるとより丁寧です。
まとめ｜迷ったら「住職様」でOK。宗派による違いも意識しよう
「和尚」と「住職」は本来、意味や使い方が異なる言葉です。
しかし、実際には多くの場面で混同されて使われており、「和尚様」「住職様」どちらも丁寧な敬称として広く受け入れられています。
特に手紙では、「住職様」または「（僧侶の姓）住職様」と書くのが無難で、失礼にあたることはほとんどありません。
相手のお寺の宗派や立場に応じて、適切な呼び方を選びましょう。
